第20回「節目」

先月、100年間を力強く生き抜いた祖父が他界しました。

その日の早朝、父から電話があり、なんとなくその連絡だと感じました。

「おじいちゃん、今朝亡くなったよ」

その時は全く涙は出ず、ショックも悲しい気持ちもありませんでした。

「お疲れ様でした、たくさん愛された人でした。愛してくれてありがとう」
大正生まれでとても厳しい人だったけれど、優しい笑顔と、暖かい手の温もりだけが頭の中に浮かんでいました。

数日が経ち、ピシッとした紺色のスーツと、

銀河に浮かぶ流星群のようなネクタイをして、安らに眠る祖父の写真が母から送られてきました。

その瞬間、

「今まで生きてきて一番幸せだったことってなに?」


「戦争の時はどうだったの?」


「ママはもうおばちゃんだけど今でもかわいいと思うの?」

こんな質問責めをしたり、一緒にビールを飲んだり、

あの大きな手を握ることはできないんだという現実が私の脳みそと心臓を揺らして、握りつぶされる感覚になりました。

悲しくなかったのではなく、受け入れられなかったんだということに気がついて、気が済むまで泣きました。

今も泣いています。


「おじいちゃん、私頑張るね」


と心に誓って、お別れをしました。

なぜ祖父の話をしたかというと、実はfucicaを立ち上げたきっかけは祖父だからなのです。

昭和39年9月に祖父が会社を創り、58年間守ってきた会社があります。


バブルやオイルショック、リーマンショックなど私には計り知れない激動の時代の中、途方もない苦労と悦びを経験しながら今も父が守ってくれています。

その会社へ入り、事業を継承することもできたのかもしれないのですが、

外の世界をしっかり経験して、考えて、力をつけたいと思い美容業界の中でサラリーマンをしてきました。

私らしく、たくさんの笑顔に出会えることでまた新たな歴史を作り、

その力で継承していきたいという気持ちが高まり、fucicaが生まれました。

2016年にfucicaを立ち上げてから、ブランドと共に私も成長をしています。


でもそれは私一人の力ではなく、そばにいて喜んだり落ち込んだり、

「おい!」と苦言を呈してくれるパートナーたちがいてくれるからだと思っています。

ありがとうございます。

祖父や父と同様にとんでもない苦悩や悦びを経験しながらも、私とfucicaは変化と進化を続けていきます。

ただ作りたいモノを作ったり何かに迎合するのではなく、

私自身が言葉以上に伝えたい想いをモノに乗せて、みなさまにお届けしていきます。

これからもfucicaを見ていてください。

私の人生の中で大きな影響を与えてくれた

「おじいちゃん、ありがとう。私頑張るからね」

という思いを新たに出発したfucicaが1年を迎えて思ったことをここに残したいと思います。

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