インタビュー第2回 fucicaディレクター YUKO「fucica創生ストーリー」

日本の伝統色を軸としたメイクアップでその人の魅力の花を咲かせたい。
なぜそのような想いが湧き上がり化粧品ブランド『fucica』は生まれたのか。
ディレクター/メイクアップアーティストのYUKOが捉える化粧観にかねてより共感し、リブランディング第一弾プロダクト〈BENI〉でサスティナブルな容器を手がけた日東電化工業『OSAJI』ディレクター茂田正和さんをインタビュアーに迎えて『fucica』の始まりについてお話ししました。

“大和色”を貴ぶ
『fucica』創生ストーリー。

 

茂田:YUKOさんと一緒にお仕事をした最初は、僕がプロデュースを手がけた高崎のライフスタイルショップでの『fucica』のイベントでしたよね。

 

YUKO:そうですね。もともとは、共通の知り合いだったメイクアップアーティストさんが境遇や化粧品との関わり方がシンクロする方がいるからって紹介してくださったのがきっかけで。

 

茂田:そうそう。僕は親の代からめっき業を営んでいる日東電化工業の中に新しい時代を見据えたヘルスケア事業部を立ち上げて。長く安全に使い続けられる日本のものづくりで培ってきた化学の知識を健康な皮膚を育むための化粧品づくりに生かす、そういった事業を展開していて。

 

YUKO:私も父親がずっと会社経営をしていたのでいずれ自分が引き継いでやっていく、というのが幼い頃からなんとなくあって。衣食住と同じくらい需要があるのはどういうものだろうと考えた時、私は美容に関することが好きだなと。学生の時にも、エステのバイトとか化粧品会社の事務バイトも経験していたので就職時にはやっぱりB to C、お客さまを知ろうとまずは外資系ブランドで美容部員から始めました。

 

茂田:面白い巡り合わせですよね。その美容部員での経験が、いまのブランドの着想に繋がっているのかな。

 

YUKO:はい。
お客さまにタッチアップしていて、海外のメイクアップアイテムの色味は正直なところ全部が全部日本人の肌に合うわけではないとわかって。

 

茂田:トーンや質感の塩梅とか?

 

YUKO:ですね。
もうちょっとだけこういう色味なら日本人の肌色にもなじみやすくなってもっといろんな色に挑戦できるはず。それに気づいてしまってからは、いくつかの色を混ぜて調整して
お客さまにご提案したりしてました。

 

茂田:美容部員として接客する中で失敗談みたいなことはありました?

 

YUKO:失敗といいますか「こういう色のリップを探しているんです」というお客さまの声に対して自分のところのブランドにあるリップだと何色かを混ぜないとこれは応えられない…あ!でもほかのブランドさんからまさにそういう色が出てた、と思い出すとそれをこそっと紹介して怒られるという(笑)

 

茂田:(笑)でも、わかります。その人にとって本当に必要なものをおすすめしたいですもんね。

 

YUKO:美容部員は自分が所属するブランドですべて応えなきゃいけない。わかっているけどなんだか息苦しいな、と思っちゃって。そういう感覚が、自分でブランドを創ろう、という方向に駆り立てたように思います。使ってくださる人のニーズにも応えつつ、自分が発信したいと思える化粧品をつくりたいと。

茂田:実際にやってみて、何が一番大変?

 

YUKO:やっぱり色みに関しては理想があるだけに苦戦しました。

 

茂田: “大和色”にはどういう経緯で辿り着いたの?

 

YUKO:これまで接客してきた中で、普段のメイクのルーティーンを変えて違う色でメイクしたいと思ったものの、どのブランドの色を試しても肌になじまずなんだか色が浮いている気がして諦めた、そんなお声が本当に多くて。日本人の肌には日本人が暮らしを共にしてきたモノ、例えば着物とか陶器、風景の中の木や草の色だったりがすごくなじむんじゃないかって。ならば、そういった色みを日本の伝統色として表した“大和色”をメイクアップ製品にしようと。

 

茂田:メイクアップって、日常のルーティーンでもあるけど好奇心の刺激という意味ですごく重要な役割も担っているものね。

 

YUKO:そうなんです。赤とか黄色みたいな奇抜な色みのアイシャドウは自分の顔になじまないと諦めてしまっていた方に、こんなに顔なじみが良いなら挑戦してみたい!という意欲が湧くような、そういう化粧品を作るために“大和色”をベースにしたいと思いました。

 

茂田:ブランド名の『fucica』は、世阿弥がまとめた『風姿花伝』が由来ですよね。“大和色”ありきでブランドの世界観も和のインスピレーションが強くなった?

 

YUKO:そうですね。パステル調とかビビッド調では括れない、奥深い色みのメイクアップを楽しんで欲しくて模索するうちに辿り着いたのが“大和色”で。私自身が和の世界にこだわりがあって、というよりは、“大和色”という新しい色彩に挑戦したくなる、印象的な入口として、と和の世界観が浮上した感じです。それから日本の伝統色って、季節や自然を取り込んだ色名も素敵なので。ブランドを創る時は、海外から日本にくる方にとっても日本の伝統色でするメイクアップに興味を持っていただけだそうだな、とも思って。

 

茂田:YUKOさんの中で海外のメイクアップの色みの傾向に対して“大和色”を軸としたメイクアップの色みはここが大きく違う、というのを言葉にできる?

 

YUKO:例えばピンクのリップを作ろうとなった時、海外のメイクアップ製品のピンク系のバリエと比べて大和色のピンク系のバリエはかなり多くあります。
桃色、桃花色、紅梅色、薄紅、珊瑚色、鴇色…ピンクだけでも微妙なニュアンス違いで10色以上のバリエが出てきますしとくにトーンが低めの色が充実しているかなと。

 

茂田:海外の色よりもビビッド感が少ない、トーンが低めというのは良い意味でくすんでいるってことかな。

 

YUKO:そうです、そうです。くすみ色については、日本人の肌色もそうですけどパーツに対してもなじみやすいんです。やっぱり欧米系の顔立ちは彫りが深めですよね。そういった眉と目の間隔が狭い方に適したメイクと日本人をはじめアジア系の顔立ちに適したメイクはちょっと違ってきます。眉と目の間隔がわりと広い東洋的な顔立ちに鮮やかではっきりした色みのアイシャドウをのせると目立ち過ぎてすこし違和感が出てしまったりします。肌になじむようなくすみ感があると彫りが浅めの顔立ちでも浮かずにいろんな色を楽しめます。

 

茂田:僕も、『fucica』と出会ったことでカラーメイクの楽しさを教えられた一人だけど今回、また良いお話を聞けました。“大和色”の良さがさらに腑に落ちたし、YUKOさんの想いの深さも伝わりました。

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